より子の言の葉。

30代半ば独身女の読書ブログです。

【再読感想】貫井徳郎のデビュー作「慟哭」

慟哭(どうこく)

[意味]悲しみのあまり、声をあげて泣くこと。

デジタル大辞泉

慟哭という言葉を知ったのは、この小説だった。

20年前の衝撃。貫井徳郎の鮮烈なデビュー作。

私が「慟哭」を使う時、それは大きな喪失感をも意味することになる。

全てはこの小説のせいだ。

持っている文庫の奥付は2003年の31版。

どれだけ刷られているかお分かりだろうか。

約15年。私は忘れなかった。

細かなとこはともかく、忘れられなかった。

久しぶりに、読み返した。

小説の中でスマホどころか携帯も出てこない。公衆電話使ってやがる。

あぁそれでも色褪せないものなのだと震えている。

「慟哭」貫井徳郎 

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まずは、この帯を見て欲しい。

シンプルで美しい。

この帯で手に取って、読んでなるほど、これ以上の言葉は出ないと思った。

そして、裏帯には殺人の動機になるから多くを語るなって書いてあるの。

あぁネタバレせず、私はこれ以上何を書こうかと悩ましいのです。

(因みに北村薫は未読です。ごめん。)

あらすじ

連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。

異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。

こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。

2部構成。

1つ目は、捜査一課長佐伯の目線で連続幼女誘拐犯を追う。

2つ目は、新興宗教にはまっていく男の姿が書かれている。

全く関係の無いような2つの物語が、交互に繰り返され話は進んでいく。

主人公佐伯と部下の丘本が魅力的

若手キャリアの佐伯と年上の部下丘本。

やっかまれる立場にありながら、クールに仕事をこなす佐伯の対応が超かっこいい。

そして揶揄される立場の佐伯を、丘本が度々に「俺だけはわかってる」感を出してきて、超萌える。(※腐ってないよ!)

佐伯の生い立ちや環境が母性本能をくすぐられるのです。

エリートが自分にだけ弱さ見せるの、よくないですか。

心の内が読めるの読書の醍醐味だよなーと思うのです。

佐伯の思考回路は本当にかっこいい。

ついでに言うと、キャリアの同期とか、新興宗教の人とか、登場人物のキャラ立ちがハッキリしていて2部構成だけどサラサラと読めるのです。

2部構成がめっちゃいい感じのところで切り替わる

なんだこの語彙力。

本書の特徴は2部構成で、互い違いに物語が進むのだけれど、

「続きはCMの後で!」のごとく、めっちゃいい感じのところで切り替わるのです。

続きめっちゃ気になるやん。これどっちの話もだからね。

だから、読み止まらない。

再読のくせに、一気読みしてしまった。

徐々に繋がっていく2つの物語。

交わるまでのゾクゾク感が堪らなくて堪らなくて、読み込ませる力に感嘆するばかりです。

何だって私は平日の夜に読んでしまったのか。

これから読む人は、絶対に時間のある時に読んだ方がいいです。

断言できるけど、途中で止めれないから。

慟哭が表現するもの

やるせなさという言葉がピッタリなんだと思う。

この慟哭をきっかけに、私は著者を名前だけで買っているけれど、

殆どの本に「慟哭」が当てはまる。

いや、泣いてはいないんだけど泣きたくなるほどに、心がえぐれる。

えぐられる。

池井戸潤と言えば勧善懲悪。

坂木司と言えば日常の謎。

こんな感じで、貫井徳郎と言えば慟哭。

だから貫井を語る時、慟哭のレビューは絶対必要だって思ったのです。

嫌ミスともちょっと違う貫井の魅力。

デビュー作から変わらない初志貫徹。

だから、私は安心して著者を名前だけで買えるのです。

 

ちょっとだけ話がそれるけど、東京バビロンって漫画の中で

”カラオケの歌に失恋ソングが多いのは、皆安心したいからなのかもね”

っていう名セリフがある。

私は貫井のやるせなさを読んで、安心したいのです。

私の人生はここまで悪くないと、安心したいのです。

えぐられた穴は、小説でよかったと、フィクションで良かったと、余韻に浸りながら埋められていくのです。

再読だから見えてきたこと

ちょっとだけネタバレになるかもしれないから、未読の人はこれ以上進むなかれ。

未読であることが羨ましい1冊なので、私の駄文を読むよりも早く本書を読むことをオススメします。

 

 

以降は読了した人が、読むことを前提に書くけれど、 

帯のセリフを借りるなら「仰天」が大きくて、大切なことを見落としていた。

伏線めっちゃある。

私、伏線見落としすぎ。

そして結局、〇〇はどこ行った。

当時、気にならなかったけど今なら言えるよ。

結末、物足りないよ!

ということで地味に★5から★4.5になりました。

やっぱりどんでん返しは初読みに限りますね。 

ちゃんちゃん。本日、おしまい。 

慟哭 (創元推理文庫)

慟哭 (創元推理文庫)

  • 作者:貫井 徳郎
  • 出版社:東京創元社
  • 発売日: 1999-03-17