より子の言の葉。

30代半ば独身女の読書ブログです。

夢見る少女じゃいられない全大人女子に告ぐ「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」を読んで自立した恋をしようじゃないか。

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こんばんは、より子です。

散文詩のような素敵な1冊に出会ったので紹介したいと思います。

試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。 by尾形真理子

 まずはもくじを読んで、この小説の詩的な美しさを感じて欲しい。

愛するものを探すのは、
女の方がうまい。

もくじ

プロローグ

あなたといたい、と
ひとりで平気、を
いったりきたり。

悪い女ほど、
清楚な服がよく似合う。

可愛くなりたいって思うのは、
ひとりぼっちじゃないってこと。

ドレスコードは、
花嫁未満の、わき役以上で。

好きは、片思い。
似合うは、両思い。

エピローグ

声に出して読みたい日本語という本が流行したけれど、この本のタイトルはそれに近いです。繊細でいながら強い一言。
思わず手に取って読むと、もくじより先に登場する

「愛するものを探すのは、女の方がうまい。」

という一文に胸がときめいて仕方ない。

この本は絶対に面白いという期待を、最後まで裏切られることなく楽しめた1冊でした。

あらすじ

年下に片思いする文系女子、不倫に悩む美容マニア、元彼の披露宴スピーチを頼まれる広告代理店OL…。恋愛下手な彼女たちが訪れるのは、路地裏のセレクトショップ。不思議な魅力のオーナーと一緒に自分を変える運命の一着を探すうちに、誰もが強がりや諦めを捨て素直な気持ちと向き合っていく。繊細な大人たちの心模様を丁寧に綴った恋物語。

 このあらすじだとちょっとライトな感じがするけれど、主人公は皆30代前半の働く女性です。自分の稼いだお金で、自分のために服を買うことができる。女の人生でそれができる期間はとても短いような気がします。その限られた期間のほんの一コマを切り取った5つの物語です。

生きている限り悩みなんてつきない。

方向性なんて見えない。ただ生きてるだけで、揺れて流される。

もやもやする気持ちに終止符を打とう。ちょっとだけ前を向いて強い女になろう。

そんなメッセージを受け取りました。

尾形真理子さんというコピーライターのデビュー作

北海道にいるとルミネってなんだっけって思うけれど、所謂大きな百貨店の広告を手掛けている人なんですね。札幌でいうと多分「Le trois ル・トロワ」的な感じです。(余談ですが、ルトロワの広告戦略にイラッとするのは私がおばさんだからだろうか)

コピーライターと聞いて納得のキャッチーな文章が目にとまります。

活字オタク的に至極の一冊です。

わたしの上にある空は、何度だって晴れる。

というタイトルでルミネのHPで短編小説を掲載していました。近いうちに1冊の本になってきっと世に出るでしょう。次回作品が楽しみです。

人は矛盾からの確信に惹かれるのだと思う。

長年の恋人との付き合い方にもやもやした主人公は気が付きました。

”良太郎をキライになったわけではない。前ほど好きかといえば、それは微妙だと思う。良太郎の何が変わったわけではない。良太郎が変わらな過ぎるのだ。”(p27より)

人は置かれている状況によって、変化していくものだと思う。学生の頃には学生の付き合い方、社会人には社会人の付き合い方、部下を持ったり、結婚したり、人生の分岐点があるたびに、今のままではいけないと、いつまでも同じではいられないと気づくはずだ。あぁそれなのに男って学生気分を引きずっている人が多い。この良太郎のように。

つーか男とか女とかの問題じゃない。周りが独身だらけだからかもしれないけれど、モラトリアム長すぎる問題です。

それに気づいた主人公はどう行動するのか。勿論続きは小説で。

 

不倫はよくないなんて百も承知だし、私は絶対にしないと断言できるけれど、「叶わぬ恋」の美しさとか「失楽園」(古い)は理解できます。不倫をしている主人公が不倫をやめるために合コンに通っていた時のことです。

”「どこに住んでるの?」
「俺の友達がクミちゃんと同じサークルだったはずだよ」
「お昼パスタだったんだ。俺もよく食うよ。うまいよね。」
なんていう、いわゆる合コン特有の会話がクミは苦手だ。
(中略)
男に甘えるどころか、甘えたフリもできなかった。モテるということと人を好きになれるということは、どうやら違うみたいだとクミは気がついた。”(p68より)

そうなんですよね。10人からモテたって、好きな人からモテないと意味がない。一人じゃない寂しさを埋めてくれる男は沢山いても、本質的な寂しさは誰にも埋められない。

…なんて考えていて嫁き遅れたのが私です。因みにブログはちょっと寂しさを埋めてくれます。(問題発言)いや、そもそもあれは「モテ」なのか。どちらかというと「オタサーの姫」なんじゃ…

あ、話が段々それていくから元に戻そう。

 

クリエイティブな彼氏と平凡な主人公。彼氏の周りにいるクリエイティブな人たちに嫉妬し、何故彼の隣にいるのが平凡な自分なのだろうともやもやします。だがしかし、

”「個性」とは、「人とは違う何か」だと思い込んでいた。
人と違うのが「個性」ではなく、自分らしいのが「個性なんだ」”(p219より)

揺らぎを確信に変える瞬間をストーリーにのせるのが上手いです。

物語の起点は「試着室」です。

定員さんは「ヒント」はくれるけど、「考える」のは「自分」です。

大きな鏡の前で、自分自身と向き合う主人公たち。

大いに共感して、読者も自分自身と対話することになります。

私が読了後に考えたこと

若いころと大きく違うのは、恋だけに夢中になれないってことです。

親の庇護のもとめいいっぱい背伸びして、24時間彼のことを考えて夢中になった恋を今はもうできない。

どんなに盛り上がっても明日の仕事は休めないし、二日酔いになれない。

唐突に恋に落ちる勇気なんてない。年をとればとるほど「世間体」みたいな圧力に押しつぶされて臆病になる。

ねぇ、でも、それでいいのかな。つまらない大人になっていないかな。

前を向いて、自立して、ちゃんと大人の恋をしてもいいんじゃないかな。

つまり、恋をしようじゃないか。

なんて、思ったのでありました。本日以上です。

思いのなるままに、おしまい。