より子の言の葉。

30代半ば独身女の読書ブログです。

思わず笑っちゃうから気を付けて。穂村弘の「絶叫委員会」

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こんばんは、より子です。
先日、某ドトールで声を出して笑っていた不審者は私です。
戦犯はこいつです。この本にやられてしまいました。

空前絶後の面白さ「絶叫委員会」 

あらすじ

 町には、偶然生まれては消えてゆく無数の詩が溢れている。

突然目に入ってきた「インフルエンザ防御スーツ」という巨大な看板、電車の中で耳にした「夏にフィーバーは暑いよね」というカップルの会話。

ぼんやりしていると見過ごされてしまう言葉たち…。

不合理でナンセンスで真剣だからこそ可笑しい、天使的な言葉の数々。

歌人・穂村弘のエッセイ集です。

始めに言っておきますが、穂村弘はちょっと変人です。しかも結構いい歳のおっさんです。(失礼)

だけど私は大好きで未だにキュンキュンしちゃって、どのくらい好きかというと、読み終わるのがもったいなくて長らく積読にしていたくらいです。

そして読み終わった今、少しのもの悲しさと何でこんな超人的に面白い文章が書けるのだろうとため息をつくばかりです。

良い活字と出会ったときは、心地よい余韻が残ります。

何気ない日常に潜んでいる「言葉たち」がちょっと特別なものに思えてなりません。

表紙に書いてある言葉

「彼女が泣くと永遠を感じます」

「俺、砂糖入れたっけ?」

彼「ウニって本当は宇宙人だったら怖いね」
彼女「わざわざ遠くから来るのにお寿司にされかわいそう」

「この花火はぐろぐろ回ります」

もたれるな

「猛犬にっこり」

「自然に掌をあてた中指の先、だよ」

この本は、著者が日常で拾い集めた印象的な言葉について書いています。上記の言葉もその一部です。

歌人、だからなのだろうか。

目のつけどころがシャープすぎます。

シャープなのにねちっこい。これでもかこれでもかって、執拗に何故印象的だったかと言葉をこねくり回します。

それがとんでもなく面白い。

きっと私が何を伝えたいのかわからないかもしれません。

聞き逃してしまいそうな言葉の数々を拾い上げで、「ん?」って思った言葉の違和感への言語化が凄いのです。

「彼女が泣く」という一種の非常事態によって、それまで淡々と水平方向に流れていた日常の時間に突然、垂直の裂け目が生じる。「今、ここに生きている」という実感の濃度が急激に高まって、それが<全て>になるのではないか。「永遠」とは死へ向かって流れることをやめた時間の特異点のことなのだ。(p42より)

何が変人的かというと

言葉に対する観察力が常軌を逸していてちょっと引きます。(ひどい)

ずっと昔から気になる言葉をノートにメモしているというのです。

だからこの本には著者がまだ学生だった頃の同級生の言葉もたくさん出てきます。

何年も何年も言葉を認めているのです。

「マツダのちんこはまるっこいです」

「こんばんは、やどかりなんですけど」

「戦国武将に学ぶ風林火山経営術」

こんなパッと見ただけじゃよくわからない言葉をずっと残しているなんて、一風変わった人ですよ。ねぇ、ほら愛しくてたまらなくなってきたでしょう。

私が残している言葉っていうのは

金閣寺の「俺たちが突如として残虐になるのは、たとえばこんなうららかな春の午後、よく刈り込まれた芝生の上に木漏れ陽のたわむれているのをぼんやり眺めているときのようなそういう瞬間だと思わないかね。」とか

舟を編むの「右とは、この本を開いた時の偶数ページがある方」とか

名言っぽいことなんてつまらない。

雰囲気だけで言葉を残すのはもうやめにしよう。

春が二階から落ちてきた。

って重力ピエロ(伊坂幸太郎)の冒頭の一文で、滅茶苦茶評価されているわけですが、

美容室で髪を洗ってもらっているときに上空から降ってくる
「おかゆいところはございませんか」

あぁあれは確かに「降ってくる」だよなぁと日常を伊坂ワールドにするテクニックに痺れるのです。

そして或る日のこと、こんなのが降ってきた。
「気持ち悪いところはございませんか」
え、と思う。「おかゆいところ」じゃないの。「気持ち悪いところ」って何。
「はい、大丈夫です。」
とりあえずそう答えながら、さらにもやもやする。すると、しばらくして第二弾がきた。
「耳は気持ち悪くございませんか」
さっき大丈夫って云ったのに。しかも何故ピンポイントで耳。耳が気持ち悪いって状態がうまく想像できなくて気持ち悪い。

ニヤリとしたらとりあえず読んでほしい

なんでもいいから読んでほしい。

だって、こんなエッセイ読んだことないんだもの。

想像の域を超えているものは、説明できないから1頁開いてサクッとちょっと読んでほしい。

きっと魅力が伝わると思うのです。

因みにですが、私の笑いのツボはサラリーマン山崎シゲルです。

 (うん、ちょっと余計なことを言ったような気がします。)

世界が歪むとき

自分が当たり前だと思っていたことが、そうでは無かったときに世界は歪みます。

本当は世界は微動だにしていないのに「ものの見方」が変わっただけで日常がひっくり返ります。

「私が生んだ子じゃないの」と聞いたところで、世界も親子の関係性も何も変わらないはずなのに云われた本人にとっては衝撃で、世界が歪む=価値観が変わります。

私はこの本を読んで大きく価値観が変わりました。

世界はこんなにも面白い。穂村さんの言葉の魔力にただただひれ伏すばかりです。

本日、愛をこめておしまい。

<関連記事>

穂村弘の「もしもし、運命の人ですか。」を読んで私は初めて活字に恋をした。

おまけ

リライトついでに最近私の印象的だった言葉を紹介します。

食べるマスク

最近見かけないけどやっぱり問題になったのだろうか。

そもそも、マスクは食べない。

食べないけど、伝えたいことはわかる。

わかるけど、いやいやどうなのよ。

こんないインパクトのある言葉をコンビニで初めて見た時の衝撃たるや、思考がループして止まらなくなったのであります。

絶叫委員会 (ちくま文庫)

絶叫委員会 (ちくま文庫)

  • 作者:穂村 弘
  • 出版社:筑摩書房
  • 発売日: 2013-06-10