より子の言の葉。

30代半ば独身女の読書ブログです。

全力で感動を伝えたい。「本のエンドロール」

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どうも、人生迷子のより子です。

迷走している人生の中で唯一断言できることは、私は本が好きです。

読書が好きです。

なのに今、目の前にあるこの本が、どのような過程で生まれてくるのかを知りませんでした。

印刷会社から見た本造り。

そこには大きな感動がありました。

エンドユーザーとして、この本をより多くの人に届けたい。

全力で書きます。

届け。本を愛するすべての人に。

「本のエンドロール」安藤祐介

あらすじ

彼らは走り続ける。機械は動き続ける。

電子化の波が押し寄せ、斜陽産業と言われようとも、この世に本がある限り。

印刷会社の営業・浦本は就職説明会で言う。

「印刷会社はメーカーです」

営業、工場作業員、DTPオペレーター、デザイナー、電子書籍製作チーム。

構想三年、印刷会社全面協力のもと、奥付に載らない本造りの裏方たちを描く、安藤祐介会心のお仕事小説。 

この本の主人公は、本造りに関わった全ての人です。

伝書鳩だなって揶揄された印刷営業マンの浦本を中心に、

装丁を造るデザイナー、DTPオペレーター、印刷機のオペレーター、特色を作る職人、製本会社、色々な人が本書に登場します。

もちろん作者と編集者、出版社もそうです。

ただ一つ一つを取り出せば、殆どは名前の残らない仕事です。

本の奥付に記されるのは、著者・出版社・印刷会社・製本会社です。

本は映画のように一人一人の名前が記されることはありません。

この本は、名前の残らない仕事をしている人たちにスポットライトを当てた物語です。

印刷会社はメーカーだろうか。

この先本が売れなくなるのは火を見るより明らかで、印刷業界は客観的に見れば斜陽産業、沈みかけた船だ。

印刷会社というのは、一見すると与えられたデータを印刷し、製品化する。

ただそれだけのような気がしていました。

物語の冒頭、会社説明会のシーンで仕事について聞かれます。

「印刷会社はメーカーです。」と、印刷営業の浦本は言います。

一方、営業の先輩である中井戸は、

「文芸作品の中身を作っているのは作者や編集者です。私たちは、それを書籍という大量生産可能な形式に落とし込み、世の中へ供給するための作業工程を請け負っています。」

この二人の考え方の違いは、度々衝突を起こします。

同じ営業だけど、仕事のスタンスがあまりにも異なる二人です。

ものづくり vs 与えられたことを確実に行う

と対比されて出てきますが、物語を通してお互いの働き方に影響を受けていきます。

二人の感情の変化は読んでいてとても気持ちの良いものでした。

何のために働いているのか。

それは、お金のためなのかもしれない。

家族のためなのかもしれない。

自分のためなのかもしれない。

私は、何のために働いているのかと言われれば、言葉に詰まってしまいます。

一般職というのは、間違いなく裏方です。雑用処理班です。

でも、私がいなければ困ることが確実にあります。

皆がスムーズに働けるようにサポートするのが私の仕事です。

DTPオペレーターの福本は「この仕事は天職です。」と言い切りました。

一日の8時間強を費やす仕事。

皆プライドを抱えながら働いているということを、随所に感じました。

本造りという観点から見れば、印刷会社は裏方です。

その裏方魂に一般職の私は共感し、心を打たれました。

働くということ 

利益を確保したうえで、最大限良いものを作りたい。

本造りに関わった人が、それぞれの立場で、強く思うことです。

ひいては、働いている全ての人に共感できることではないでしょうか。

より良いものを作りたい。

より良いサービスを提供したい。

そのためにはどうしたらいいのか。

「目の前の仕事を毎日、手違いなく終わらせることです。」

本書のキーワードとなる一節です。

物語の途中で、大金をかけて購入した印刷機が登場します。

目論見がハズレ、稼働率が低い印刷機です。

殆ど使われていないその印刷機を維持するために、毎日きちんと手入れを行っている人がいます。

いつ使われるかわからないもののために、毎日プライドを持って手入れをしています。

そんな機械が、日の目を見る時が来ます。

「おい、デクノボー、出番だとよ。ずっと暇こいてた分、しっかり働こうや。なぁ」

印刷機は仕事仲間だと機械に話しかけるキュウさんの、手違いの無い仕事を見ます。

この印刷機が稼働したとき、私は涙を堪えることが出来ませんでした。

まとめ

書店員さんは言いました。

「そのために私の立場でやれることは、素晴らしいと思った本を一冊でも多く売り場から読者の手へ送り出すことです。

この本が私の手元に届くまでの物語を、私は存分に楽しみました。

関わった人すべての気持ちが乗ったこの一冊を、一読者の私はどう伝えようか。

感動を伝えることは難しいと実感しました。

それでも伝えたいと思うのは、この本を手に取り、読了した私にしか伝えられないことがあると思っているからです。

最後に伝えるのは私なのだと使命感にあふれています。

どうか届け。

おまけ。電子書籍のこと

「たとえ売れていない本でも、電子書籍ならネット上で、絶版されずに生き続けられる。一度この世に誕生した”本”に、半永久的な生命を与えてくれる。これが電子書籍の素晴らしい点ではないでしょうか」

電子書籍が台頭すれば、印刷会社の仕事は少なくなるでしょう。

応援の意味も込めて紙の本にこだわり続けている私ですが、こんな考え方もあるんだなと電子書籍に対して肯定的にとらえることができました。 

本のエンドロール

本のエンドロール

  • 作者:安藤 祐介
  • 出版社:講談社
  • 発売日: 2018-03-08

<おまけのおまけ> 

印刷会社の実情を描いたコミックエッセイです。

こちらも面白かったです。

いとしの印刷ボーイズ

いとしの印刷ボーイズ

  • 作者:奈良裕己(BOMANGA)
  • 出版社:学研プラス
  • 発売日: 2018-06-12