より子の言の葉。

30代半ば独身女の読書ブログです。

20年前の高鳴りを思い出してみませんか「大きな音が聞こえるか」

f:id:bookbb:20181020222236j:plain

どうも、人生迷子のより子です。

作者買いしている坂木司さんの青春小説「大きな音が聞こえるか」が、人生迷子の心に響いたので紹介したいと思います。

高校生×サーフィン×青春

全くもって私の人生とは縁が無さそうな小説だと思ったのですが、想像よりずっと深い話でした。そして、何よりの収穫は純粋だったあの頃のわくわくを思い出すことが出来ました。

大きな音が聞こえるか by 坂木司

あらすじ

 退屈な毎日を持て余す高1の泳。サーフィンをしている瞬間だけは、全てを忘れられる気がした。そんなある日、泳は“終わらない波”ポロロッカの存在を知る。「この波に乗ってみたい―」。こみ上げる想いに、泳はアマゾン行きを決意する。アルバイトや両親の説得を経て、退屈な日常が動き出す。降り立った異国が出会ったのは、様々な価値観と強烈な個性を持った人々。泳はもがきながらも、少しずつ成長していき…。

主人公の泳(えい)くんは、恵まれている男の子です。

物凄いお金もちではないけれど、何不自由なく過ごせる環境で、両親からの愛情をたっぷり注がれています。

だからこそ、世間知らずで無知で純粋です。

初めてのアルバイト、初めての異国での冒険、初めての異性とのほにゃらら。

初めて尽くしの彼の葛藤と成長に、昔を思い出して懐かしさを感じるのは間違いありません。

とりあえず伝えたいこと

長いです(笑)733ページです。

文庫本2冊くらいあります。(重くて腕が疲れたよ・・・。)

それでも一気読みしちゃうくらい面白かったですが、時間のある時に読むことをオススメします。

また、ポロロッカ=アマゾン河を逆流する終わらない波(と言われているもの)です。

現地の言葉では「大騒音」を意味します。

「やりたい」の行動原理は「なんとなく」でいい

アマゾンに行くために、アルバイトをしてお金を貯めながら忙しい日々を送ります。

 行く前に親の了承得なければと思いながらも、なかなか行動に移せない泳くん。

ついに切り出したものの危険だからと反対されてしまいます。

「それでも行きたいなら、僕らがうなずけるような理由を提出してほしい。泳くんがどうしてそこまでポロロッカに乗りたいのか、なぜアマゾンじゃなきゃ駄目なのか。それがわかったらまた話し合おう」

アマゾンじゃなきゃ駄目な理由

ハワイやオーストラリアじゃ駄目な理由

淡水だから?違う。

ブラジルという国自体に興味があるわけでもない。

ポロロッカに乗りたい。ただそれだけなのに、と泳君は親を説得する理由を探します。

この葛藤っぷり、そして「答え」を見つけるまでの一連の流れは、人生迷子の私に強く響いたのでありました。

「だって俺、どうして自分がサッカーやりたいかなんて説明できないもんな」

「じゃあ、なんでやってるかって聞かれたら、どう答える?」

「好きだから」

山下の答えに、俺はつかの間言葉を失う。

「好き、だから…?」

「そう。でもな、いつ好きになったとかならわかるけど、どうして好きかって聞かれたら、こう答えるしかねえな」

山下はブラジルの国旗をひらりと広げると、得意げに胸を張った。

「なんとなく、だ」

(p288より)

好きに理由なんてない。好きは理屈じゃない。

言葉で説明できないからこそ「好き」なのです。

こんな、あたりまえのことを大人になるとどうして忘れるのでしょうか。

それこそ理屈ではなく、ガツンと衝撃を受けました。

もう一度言います。「好きに理由なんてない。」のです。

 友人との会話でヒントを得た泳くんは、この後両親の許可を得ることに成功しました。

そして物語は後半戦、いよいよアマゾンへ旅立ちます。

地球の反対側へ一人で行けるだろうか。

今、大人になった私は情報収集する知識とお金があります。

物理的にはブラジルに行くことが出来ます。

だけど、英語すら伝わらならないようなところへ、治安が悪そうなところへ、一人で行く勇気があるだろうか。

「なんとかなる」って見切り発車が出来るのは子供の特権だと思います。

幾度もの失敗をしてきているから、中途半端な経験が私の行動を狭めているような気がします。

そもそも私は一人行動が好きで、いきなり大学辞めて東京行ったり、一人旅(国内)したり、結構好き勝手に生きてきたのに、どうしてこんなに冷めているのだろうか。

知らない世界に飛び込むことは、こんなにもわくわくすることなのに。

つまらない大人になっていませんか?

ブラジルへ行く前の泳くんは、

エスカレートの学校で受験もない。レールの敷かれた人生が恵まれていることはわかっているけれど、なんとなく府に落ちない。

だってレールの上の大人はとてもつまらなさそうだから。 

予定調和な人生が、大人になることが、つまらないことだと思っていたように感じます。

ですがブラジルに行き異文化を体験し、感じ、日本とは違う世界を見ます。

ポロロッカに乗るために、船に同乗した人たちは、年齢も国籍もバラバラです。

ただこの同乗者の大人たちは、ポジティブ で日本の大人とはちょっと違います。

「何で大人なのに、楽しそうなんだろう?」

泳くんの疑問に同乗者たちは答えます。

『大人は喜びに溢れている』。つまり。

「大人は楽しくて、当たり前……?」

楽しいのは、子供じゃないのか。俺がたずねると、バディ・ジュニアはきっぱりと首を横に振る。

『大人は、子供の楽しさを超える楽しさを経験できる。自分の人生を自分で好きな方に変えることができる。大人は、フリーだ。』

(中略)

『大人でも子供でも、楽しく生きられるかどうかはその人物次第だ。ただ、大人の方がチョイスできることが増えるってだけのことだと思うね』

(p578より)

 大人は自由。

自由だからこそ、舵取りが難しいと思う今日この頃ですが、

泳くんの冒険譚は、羅針盤なんかなくてもなんとかなるってことを思い出させてくれました。あれこれ難しく考えるより、波に乗ってみるのも一興です。

つまらない大人が多いように感じても、自分自身はつまらなくならなけばいいだけなのです。

まとめ

泳くんの成長と冒険の物語は、過去の自分とリンクします。

ブラジルは極端だとしても、誰だって「初めて」の「何か」に挑戦して、成長してきたはずです。

そして読んだ後気づくのです。

このわくわくした胸の高鳴りを、何故私は忘れてしまっていたのだろうかと。

青春を思い出して、今なら何だってできるような気がします。

いや、何かわくわくすることを今すぐにやりたい。

そんな気持ちになった素敵な1冊でした。

おしまい。

おまけ

ポロロッカの動画です。確かに終わらない波。凄いです。

www.youtube.com


 

大きな音が聞こえるか (角川文庫)

大きな音が聞こえるか (角川文庫)

  • 作者:坂木 司
  • 出版社:KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015-07-25